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僕と私の、再初恋。

第2章 ハジマリ

なんなんだ、全く。なんで他人の仕事をさせられてるのかな、俺。
僕ははぁ…と息をつく。
そりゃそうだった。

「わり!あのさ、俺今日デートなんだ。頼む!代わりにやってくんね?この埋め合わせは必ずするから!じゃ、頼んだぜ、稜!」
「あ、おい!」
同僚の隆明が僕に仕事を押しつけて、とっとと出ていってしまった。女の子とデートだから。
「くだらねぇ」
バカじゃねぇの?僕は心底思った。女の子なんて…
信用しない。できない。必要ない。
僕はずっと思っている。もう2度と恋愛することなんてない。ありえない。人を好きになることは一生ない。

僕は、隆明に押しつけられた仕事をこなし、帰ろうと思った時には既に夜の9時を回っていた。僕の仕事自体は5時には終わってたのに。迷惑極まりない。
「帰ろう…」
誰も居ないオフィスを出て、僕は駅に向かう。近くのコンビニで缶コーヒーを買って飲んでいると、電話が鳴り出した。取り出して見てみると、隆明だった。
「なんだよ…」
呆れながらも電話に出てみると、
「おい、稜!今から来てくれ!」
すごく切羽詰まった様子で隆明が叫んでいる。
「なんだよ…叫ばなくても聞こえるから。つかデート中だろ。女の子優先にしろよ。仕事は片付けといたから」
しかし、隆明はまるで無視してきて、
「いいから今すぐ来て!表参道のいつものバーにいるから!待ってるから!じゃあな!」
「あ、おい!」
また勝手に切られた。人の話聞けよ。僕は心の中で毒づきながら、いつも隆明と行っているバーに向かった。

「いらっしゃ…おー稜くん!なんか久しぶりだね〜」
「どうも…あ、隆明は?」
バーのマスター。なんかめちゃくちゃノリがいい人。少し戸惑う所があるんだけど…この人。
「隆明くんならいつもの席にいるよ‼︎」
僕は奥のテーブル席に向かう。そこには、隆明と、若い女の子2人が座って飲んでいた。
「隆明…」
こいつ、2人の女の子とデートしてたのか?ふざけやがって。仕事しろよ、マジで。
「おー稜!来た来た!まー座れ!」
「なんだよ、マジで」
僕は座らない。すると、隆明が、白いブラウスとチェックのスカートの女の子を指差して、
「稜に紹介したい子が居るんだ!この子、お前と会いたいって言うからさ〜」
「は?」
「だからさ、この子をお前に紹介したくてだな」
僕は。
その子の事を見て、隆明を見て。
「悪い、そう事なら帰るわ」

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