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ツインテールの君

第1章 聖夜の宴のデザートは?



「……國佳さん。今夜はお疲れ様でした」


 一礼したすみれの動きに合わせて、二つに結った黒い巻き毛が彼女の肩をくすぐった。


 顔を上げたすみれの瞳はやはり綺麗だ。


 半ばショップ店員の延長線上にいる気分で宴を仕切っていた時は、よく見澄ましていられなかった。

 だが、今こうして改めてすみれを見ると、可憐な目鼻立ちはともすれば緻密な計算の上に完成された芸術品よろしく整っており、みずみずしくも艶かしい首筋から続く肢体は、奢侈なロリィタ服をまとっていても分かるほどの見事な線を描いている。

 白く、そして淡い薔薇色だ。二つに結われた黒髪さえ、星屑を吸った説明し難い色彩に見える。

 そしてすみれの人となり。

 すみれには、今時ありえない、地元に帰ってこんな少女と出逢ったことを自慢しても、どうせまた妄想だろうととても信じてもらえないような身性が備わっていた。…………



 つと、國佳はあることを思い出す。


「ねぇ、すみれさん」


 そして一歩、すみれに距離を詰めた。


「とっておきのデザートがあるの」


 …──一緒にいかが?


 そう、國佳はすみれの細い腰を引き寄せた。

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