ツインテールの君
第2章 えろかわ。
「むらむら、していたように見える?」
「國佳様、真面目そうに見えてエロいもん」
すみれが、白いフェイクファーで出来たウサギのぬいぐるみを抱き締めた。
今し方クローゼットから引っ張り出した『Failieta Milk』の商品を後ろ手に隠して、國佳はすみれの前に歩いていく。
「すみれちゃん」
「はい?」
「すみれちゃんは、お菓子作りは得意な方?」
「…──!!」
國佳は背から右手を出す。
握っていたハンガーに、『Failieta Milk』のエプロンがかかっていた。
メイド服に合わせるようなエプロンではない。
その昔、従業員割引で買ったエプロンは、ロリィタと給仕係がいかに別物かを世間に知らしめるための代物だ。
商品名も、『花を摘む妖精達のふるふりるエプロン』という。
真っ白な胸当てにはドットチュールのリボンが縦に並んで、肩紐にもフリルとチュールが重ねてある。膝当てにも、当然、フリル。左側の太股に被さろう辺りには、草木のプリントにリボンの薔薇や刺繍の花がとり合わせてあった。
さしあたり前掛けは籠、そこに摘みたての花が盛られた具合のデザインだ。
「わぁ。お花を摘みに行くんですか?」
「まさか」
「では、何を」
「すみれちゃん、こんなエプロン好きじゃなくって?」
國佳はすみれの耳許に息を吹きかける。
「私は、すみれちゃんが妖精さんになれば、もっと大好きになると思うわ」
「國佳様……」
すみれの甚だ無自覚な声が、とろんとした熱を帯びる。
フェイクファーのウサギのぬいぐるみから、細い腕が滑り落ちた。