ツインテールの君
第2章 えろかわ。
國佳は、すみれがキッチンを立ち回るのを観賞していた。
薄化粧のかんばせは、ところどころの血色が不自然に濃ゆい。チークの所為ではないようだ。
潤んだ双眸、ひとえに黒と呼び難い清澄な黒曜石が、あるじの手許に集中していた。白熱灯の光を吸って、今にも透き通ってしまいかねない手が、砂糖で甘くしたバターと黄身の溶け合ったボールを熱心にヘラで練っている。
すみれは、例のエプロンの他に何も着用していない。
身を隠す役目をなさない布地の至るところから、雪を白亜に変えたごとくの生まれたままの無垢なパーツが、あられもなく露出していた。
…──年に一度、料理はバレンタインデーに型抜きクッキーを作るくらいなんです。
そう言って一度は國佳の悲願を拒んだすみれに拝み倒して、ようやっと得た機会は存分に活用したかった。
そこで國佳は、俗に言う裸エプロンをすみれに求めたのである。
すみれが腕を動かす度に、歩く度に、心許ないエプロンがひらひら揺れて、しどけないところが見え隠れする。
「…──っ。見ないで下さい。気が散ります」
「見られてると感じたりとか、すみれちゃん不都合なことでもあるの?」
「クッキーに塩、入れますよ」
「ふぅん」
リビングを離れ、國佳は調理場に立ち入るや、すみれをぎゅっと抱き締めた。
「ひゃぅっ……國佳様!」
両サイドが編み上げになった胸当てを大いに盛り上げる、豊かな丘陵をむにゅっと掴む。