ツインテールの君
第2章 えろかわ。
よく知る二人を認識するや、國佳は、幻にでもまみえた類の衝撃に見舞われた。
「どうしたんですかっ?」
「どうした、じゃないわ」
長い金髪に黒いロリィタ服。國佳の親しい同期と肩を並べていた女性が、見覚えのある鍵を國佳の目線に持ち上げた。
「あっ」
「忘れ物。國佳のでしょう?國佳が帰っていってから少しして、気付いた。バックルームに置きっ放しだったわよ」
隣で解説したせりはとは、百八十度違った感じの──…すとんとしたワンピース姿の女性の手から、國佳のそれに、鍵が渡った。
國佳の手に馴染んだ鍵は、呑気なアルパカのマスコットが寄り添い、やはり呑気に口角を上げていた。
「有難うございます。わざわざすみません……」
「良いの。私はこっちが帰り道だし」
「助かりました。……明日早番なのに、すみれちゃんが来てくれた途端、舞い上がっちゃって、忘れていたわ」
「私は、全く逆方向に帰るところだったわ。今夜が満月じゃなかったのが、不幸中の幸いね」
なるほど、せりはは以前、魔術だのまじないだのの趣味に没頭出来る恰好の条件として、満月が空に昇っている状態を挙げていた。
じゃ、と、ノブを引きかけた國佳の手が、花井の声に止められた。