ツインテールの君
第2章 えろかわ。
「待って、更級さん」
「はい、……」
「あの、あの……ね」
泣く子も黙る、ロリィタファッションの金字塔メゾン『Failieta Milk』。
年収○○の会社を一代で築き上げたやり手の代表取締役も、こうして公の場を離れたところで見ると、可愛らしい。控えめなもの言い、くっきりした目許を飾る夜空の色の双眸は、心ここに在らずといった感じだ。
「社長……?」
「来る途中、更級さんのお好きなものについて、風島さんにお聞きしたの」
「はぁ」
「妄想が、お好きなんですってね。さっきの桃兎さんも。……あの、良ければ少しお目にかかっても」
「ええっ?!」
「お邪魔でなければ、で、良いの。ウチのお洋服をお召しになるお客様が、普段どのようなことに興味を持ち、おうちで過ごされているか。お客様の妄想が、今後の参考になることもあるから──…」
「いや、その、そういう妄想では……」
國佳はせりはに縋る思いで視線を巡らす。
乙女の台所仕事に花を添えるためのエプロンを、本来の趣旨とはまるで違った用途に使っている。
それは、さすがにまずいのではないか。
もの言わぬドールの情緒をまとった友人は、事実、薄情なドールを決め込んでいた。