ツインテールの君
第3章 Decoration cake princess
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公共の大浴場は、マンションから徒歩五分ほど先のところにある。
國佳とせりはは、晴れて大家の許可を得た。そしてすみれを呼びつけることに成功した。
広々とした脱衣室に二人が入ってまもなく、すみれから到着の知らせが届いた。
國佳が軒先に出ると、さしずめ深海を明るめる真珠のごとく少女がいた。一週間ほど前に『Fairieta Milk』の店内で接客して以来の、すみれだ。
ぱっちりくっきりした目許にきらめく双眸、すみれのすっと通った鼻梁の先はきゅっと締まって、薄い唇が艶やかな血色を帯びていた。長い柔らかな黒髪は、時たま緩く巻いてあることがあるものだが、今宵は夜闇に遊ばせて、低めの位置でツインテールに結ってある。
さっき、すみれのあんなツイートを目にした所為だ。
國佳には、すみれのまとうせりはと色違いの白いフェイクファーのショートコートさえ、自分宛のプレゼントの包装紙にしか見えない。
國佳はすみれを脱衣室に案内した。
挨拶もそこそこに、國佳は本題を切り出した。
「さぁ、すみれちゃん。お洋服をお脱ぎなさい」
「國佳様とせりはさんも早く脱がないとー」
すみれに伸ばした國佳の手が、彼女自身に制止された。
どうやらすみれは、まだ、この三人が入浴するためだけに集まったものだと信じ込んでいるようだ。
結局、せりはが先頭を切って洋服を脱ぎにかかった。