ツインテールの君
第3章 Decoration cake princess
「ぇえええええええ?!!」
ただでさえ反響しやすい浴室に、上品な、とろけるように甘ったるいソプラノが、大音量で響き渡った。
國佳とすみれ、せりはの三人で、かけ湯を浴びていた時のことだ。
「あ、あれ、あああ、あれ、あれ、 …!!」
すみれの口が、水面に上がった金魚よろしく開閉を繰り返す。
彼女が驚愕を露にして、ふるふる指をさしているのは、くすんだ白い大理石の色をした浴槽だ。
浴槽は、人間十人は浸かれる広さがあって、すずらんと女神の像が真ん中にある。その見目は、純和風の建物からは想像し難いヨーロピアン調の大浴場を、特に華やかに彩っている。
中は、遠目だと雲にも雪にも見える、もこもこした純白に、溢れんばかりに満たされていた。
「まさかあれって生クリーム?!」
「練乳もあるわよ」
「…──!!」
國佳は、すみれのこれ以上に驚けないと言わんばかりの表情(かお)の真ん前に、チューブ式の練乳を掲げてみせた。
「國佳様……、國佳様ってば、すみれのためにぃ……っ」
ああ、可愛い恋人のためなら破格の贈り物も惜しまない。
そうした人間の気持ちを、未だかつてこうも理解したことがあったろうか。
盛り上がるところは盛り上がり、締まるところは締まった肢体。かくも無防備なものをバスタオル一枚にくるんで、愛らしい顔を感慨に歪める天使を眺めて、國佳は叫び出したい衝動に耐える。