ツインテールの君
第3章 Decoration cake princess
國佳はせりはと肩を並べて、大理石の浴槽の縁に腰かけていた。
浴槽では、すみれが一糸まとわぬ格好で、純生クリームの風呂を満悦している。
一つにまとめた黒髪から水蒸気のしずくがしたたり、上気した頬や肩を濡らす。すみれが練乳のチューブを持ち上げる度、純生クリームを掬った指が、唇の隙間に覗く紅色の舌先に至る度、細い腕が官能的な線を描く。
國佳は、携帯電話でこの奇跡的なシーンを撮影していた。防水加工の施してある携帯電話を使っていた自分を、今日ほど誉めたくなったことはない。
「ねぇ、すみれちゃん。ちょっと練乳を手につけて、生クリームにしているみたいに食べてみて。あ、ついでにこっちに流し目ね」
「こう、ですか?」
「そうそう、あー、エロいわぁ。もうちょっと腰を浮かせてくれない?胸は隠してね、チラリズム」
「恥ずかしい、です……」
「誰にも見せないってば。肩はクリーム取って、腕はついたままね。腕を上げて、わき、こっちに見せて。んー……くびれまで見えると有り難いかも」
「もうっ、いい加減、写メ撮るのやめて下さい!落ち着いて楽しめません」
「あらあら、すみれちゃんの念願の生クリームのお、ふ、ろ。練乳まで準備してあげたのは誰かなぁ?」
「うっ……國佳様です……」
すみれから、人参をお預けされたウサギよろしく威勢が薄れる。
それでもすみれは、すぐにまたチューブを握って、頬をもぐもぐ動かし始めた。よほど練乳を好いているのか。