不透明な男
第6章 暖と冷
ブルッ
隣に居た翔が身震いする。
智「ふふ、翔くん怖いの?」
翔「べっ、別に」
智「んふふ…」
そっと廃墟に足を踏み入れる。
…ミシッ
歩く度、体重で床が軋む。
この廃墟、外観は白いウッド調の小さな洋館といった感じの建物だった。
小さな庭には花壇だったであろうレンガが転がっており、花壇から這い出たと思われる花や雑草、大きな木に細い木等、植物が生い茂っていた。
その、長い年月、手付かずだったという雰囲気から洋館の中も想像がついていた。
きっと、中もぐちゃぐちゃなんだろう。
そう思っていた。
智「え…」
翔「あ、あれ?思った程…」
確かに汚い。
窓枠や本棚はホコリを被っているし、ソファーだって破れている。
だが、それ程散らかっている訳では無かった。
智「なんか、廃墟ってさ」
翔「うん」
智「ホコリだらけで窓とか割れちゃっててさ」
翔「うん。床はガラスの破片だらけで」
智「…って思ってたんだけど」
翔「うん…まだ、全然マシだね」
それ程ひどい荒れ様では無かった為、俺と翔はほっと胸を撫で下ろした。