不透明な男
第6章 暖と冷
よく見回してみると、窓枠にはホコリが被っているのに、テーブルにはそれ程ホコリが無かった。
薄く被っているくらいで、まだ1ヶ月やそこら位の感じだ。
ソファーだって破れてはいるが、ホコリらしい物はあまり無く、まだ綺麗なブランケットが掛かっている。
智「誰かいたのかな…」
翔「そうですね…」
床の隅の方はホコリが溜まって白くなっているが、人がよく通るであろう場所は、あまり白くなかった。
智「…薬?」
翔「これは…睡眠薬と、精神安定剤ですね」
まだ綺麗なテーブルには薬が置いてあった。
隣には飲みかけのミネラルウォーターがあった。
翔「賞味期限は…まだまだありますね。」
智「…」
誰かが此処に居た。
その証拠が残っている。
眠れない日々を薬で誤魔化し、苦しんでいた。
そんな人が此処に居た。
何故かそんな気がしてたまらなかった。
翔「大野さん…?」
智「…ハッ、あ、あれ?」
翔「どうかしました?」
智「え?いや…」
何だろう?
何か引っ掛かる。
何かを思い出せそうなのに、何も分からない。
もどかしい…
翔「本当に大丈夫ですか?」
智「う、うん。携帯、探すよ」
翔「はい」
気になる…
何が気になるのか分からないけど
何かが…
智「…っ」
翔「え?」
智「く…っ…」
翔「大野さん?大野さん!?」
頭が割れそうに痛くなった。
目の前が、暗くなる。