不透明な男
第6章 暖と冷
頭がガンガンする。
頭の中で大きくて重い金を打ち鳴らされている様で聴覚がおかしくなる。
只々、ぼわんぼわんと頭の中が響く。
…とし、…智…
あ、まただ。
俺の髪がさわさわと揺れる。
暖かい手が俺の髪を撫でる。
…だれ?だれなの?
教えて…
智「う…」
翔「大野さん!」
頭がぼーっとする。
俺を心配そうに見ているのは…
翔「大野さん、大丈夫ですか?」
目の前がぼやけてよく見えないな…
ああ、でも、この声は…
俺は目の前のぼやける人物に手を伸ばす。
その人は俺の手を掴む。
翔「しっかりして…」
何故か俺の手は震えていた。
翔「なんで…泣いてるの?」
俺の目から水が溢れる。
翔「大野さん…」
俺は、ぎゅっと抱き締められた。
その締め付けが心地好くて、離したくなかった。
俺はその胸にそっと手を置くと、離れない様に震える手できゅっと掴んだ。
翔「泣かないで…」
俺の薄く開いた唇が塞がれる。
それは暖かくて柔らかく、とても優しかった。
俺の腕は、自然とその首へと回されていく。
両腕で首にしがみつくと、触れているだけだった唇は深く重なってきた。
翔「大野さん…」
智「…ん…ぅ…」
俺の歯例を割って温かい舌が入ってくる。
その舌が、俺の舌を舐める。
翔「震えないで…」
智「ん…ふ…」
その熱を離したくなくて、自分からその舌を捕らえにかかる。
しがみついた両腕には力が籠り、離すまいと懸命に舌に吸い付く。
翔「…ん、お、大野さ…っ…」
その舌も、俺に負けじと反撃してくる。
ぴちゃぴちゃと湿った音が耳に響く。
翔「ん、ふ…大野さん…」
智「んぅ…ん、ふ、ぁ…」
俺の意識は再び薄れていった。