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不透明な男

第6章 暖と冷


智「ん…」


俺は眉をしかめ、目を開ける。


翔「気が付きましたか?」

智「あれ、おれ…?」

翔「突然、頭を抱えて倒れたんですよ」

智「あ、あぁ…そっか…」


俺は破れたソファーの上に居た。
仰向けで見上げる目の前には翔の顔。


智「…ずっと、膝枕してくれてたの?」

翔「このソファー、ふにゃふにゃで寝心地悪いかと思いまして」

智「ふふ…ありがと」


よっこいしょと翔の手を借りて起き上がる。


智「また迷惑かけちゃったね」

翔「いえ、迷惑なんて…」

智「ごめんね?」


俺は潤んだ目で翔を下から覗き見る。
ふと、涙が零れた。


智「…あれ?」

翔「なんで、泣いてたんですか…?」

智「え…、おれ、泣いてた…?」

翔「…覚えてないんですか?」


キョトンとする俺の顔を翔が見つめる。


智「や、なんか、夢を見て」

翔「夢?」

智「それが…よく、わかんなくて」

翔「どんな?」

智「あんまり覚えてないんだよね」


俺はあまり覚えていなかった。
もやもやする気持ちだけが残っていた。


智「んで、目、覚まして…」

翔「は、はい」

智「覚まして…?え?あれも夢なのかな…」

翔「え?」

智「や、なんか…、え?あれ?」


俺の頭はぐちゃぐちゃで良く分からなかった。






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