不透明な男
第6章 暖と冷
頭の中で、整理が付かなかった。
あれは全部夢だったのか、それとも現実か。
智「おれ、寝てる時、なにしてた…?」
翔「へっ」
智「夢なんだろうけど…なんだか、凄くリアルで」
翔「なっ、何がですか?」
智「それもあんまり覚えてないんだけど、感覚と言うか、感触と言うか」
翔「お、覚えてない…?」
智「ん。だけど、すんごくふわふわして、気持ちよかったんだよね…」
翔「ええっ!」
智「…翔くん、なんで赤いの?」
なぜか翔が隣で顔を赤らめていた。
智「ん?今度はどしたの?」
と、思ったら項垂れていた。
智「ヘンな翔くん」
翔「貴方のせいですよ…」
なんか俺、悪い事したかな?と小首を傾げながら携帯探しを再開する。
智「いつまでも項垂れてないで翔くんも手伝ってよー」
翔「は~い…」
心なしか翔が不貞腐れてる気がした。
まだ探していない部屋にも入る。
が、ホコリが凄くて探すまでもなく、随分長い間人が立ち入った形跡が無い事が分かった。
翔「この部屋も駄目ですね」
智「こっちもだよ」
どうやら誰かが使っていたのは、このリビングだけの様だった。
智「無いや…」
翔「ですね…」
智「翔くんありがと。かえろ?」
翔「もういいんですか?」
智「うん」
翔の車に乗り込むと、辺りは既に薄暗くなっていた。