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不透明な男

第6章 暖と冷


翔が車を走らせる。
俺は車窓を眺めていた。
辺りはあっというまに暗くなり、窓に顔が映る。


翔「お腹、空きません?」

智「うん、減った」

翔「メシ、行きましょう」

智「翔くんでもメシって言うんだ」

翔「そりゃ言いますよ」


窓に映る翔が笑う。


翔「どうせ独りじゃ食べないんでしょ?」

智「ふふ」


なんだか見透かされてるな、と可笑しくなった。


帰り道で見つけた小さなロッジ風のレストランに入った。
オレンジ色の灯りのせいか、少し気分が落ち着いた。


翔「疲れたでしょ?」

智「翔くんこそ。ずっと運転してもらってごめんね?」

翔「大丈夫ですよこれくらい。」


俺の顔を見ながら翔はニヤニヤしていた。


智「なに…?」

翔「はい?」

智「なんか、ニヤけてるよ?」

翔「えっうそ」

智「すんごいエロおやじみたいな顔してる…」

翔「う、嘘でしょ!?」


マジかおい、俺やべぇと翔は両手で顔をむにむにしていた。


智「翔くん、冷めちゃうよ」

翔「あっ、いただきまーす」


さっきまで百面相してたのに、急に真面目な顔でご飯を食べ出した。


智「翔くん、前も言ったと思うんだけどさ」

翔「ふぁい?」

智「マジでそのうち死んじゃうよ?」


翔は今日もハムスターみたいだった。




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