不透明な男
第6章 暖と冷
この店の料理はとても美味しく、久し振りにしっかり食事をした気がする。
智「ふーお腹いっぱい」
翔「美味しかったですね」
智「こんな美味しいとお酒呑みたくなっちゃうね」
翔「…呑みに行きます?」
智「え、だって翔くん車…」
また車に乗り込むと見た事の無い道を進んだ。
車が停まったかと思うと、俺を酒屋に放り込み翔はちょっと待っててと言う。
翔「車置いてすぐ戻って来ますんで」
智「うん、気を付けてね」
どうやら翔の家の近所らしい。
「はい、初めてだからサービスしちゃうよ!」
智「ありがとう♪」
俺がニコッと笑うとこの店のオーナーはぽっと赤らんだ。
「ほ、ほらほら、グイッといっちゃって」
智「んーでも、先に呑んじゃうと翔くんに悪いし…」
小首を傾げて悩む俺にスタッフが声を掛けてくる。
「だ、大丈夫っすよ!マスターの勧めなんだって俺からちゃんと言っときますから!」
智「そう?」
「私達と一緒に乾杯しましょうよ~♪」
智「んー、じゃ翔くんには悪いけど…」
「「「「かんぱーい!」」」」
なかなか雰囲気の良いこの店は、独りにされても緊張する事無く酒が進んだ。
「智、いい呑みっぷりだね~」
智「んふふ、おれ、なかなかでしょ?」
「智さん、これもどうですか?俺のおごりっす!」
智「いいの?ありがとね」
「やだ智君かわい~♪」
俺はスタッフ達に囲まれて勧められるままに呑んでいた。
ふと、視線を感じた。
店の入口で翔が佇んでいた。