不透明な男
第6章 暖と冷
店の入口に突っ立っている翔を見つけた。
智「あ、翔くんおかえりい♪」
翔「お、大野さん…」
智「ごめんね先に呑んじゃって。我慢できなくて」
翔を見上げて申し訳なさそうに微笑んだ。
翔「我慢出来ないって…子供ですか貴方は」
智「怒っちゃった?」
翔「…ぐ、お、怒る訳無いでしょう!」
智「んふ、よかった」
翔「ただね?大野さん、離れましょうね?」
オーナーの肩に凭れ掛かる様にして呑んでいた俺を、翔の手がグイッと引き離した。
客は俺達だけじゃ無いでしょう?アッチ行きなさいとスタッフを追い払うと、真面目な顔して俺に向き直った。
翔「大野さん。つかぬ事をお伺いしますが」
智「あい。」
翔「貴方、酔うといつもあんな感じなんですか?」
智「あんなって?」
翔「オーナーなんて初めて会ったのに、あんな仲良さそうに…」
智「だって、悪い人じゃなさそうだったし」
はあ、こりゃ堪んないわ大変だと翔は頭を抱えた。
智「女の子達に翔くんの事聞かれたよ」
翔「は?」
智「やっぱモテるんだね翔くん」
翔「え、まあ、ちょっと位は」
智「頭もいいし、かっこいいもんねえ。妬けちゃうなあ…」
頬杖をつきながら小首を傾げ、酒で潤んだ目を翔に向ける。
翔「あ、あああなた、それ、分かっててやってんですか!?」
智「ほえ?」
何が?と小首を傾げる俺に、翔は呆れた顔を向けた。