不透明な男
第6章 暖と冷
いつの間にかドンチャン騒ぎ状態だった。
閉店間近のこの店には数人の常連客しか残っておらず、その客とオーナー、スタッフ達を交えて騒いでいた。
すっかり酔った俺はふらふらとあちこちに凭れ、その都度翔に引き戻されていた。
そんな俺は、翔の懐が定位置のように後頭部をその体に預ける様になっていた。
智「やっぱ翔くんってかっこいいなぁ」
俺は翔を見上げて言う。
「だろ~?爽やかだしうちの店では人気者なんだよ」
翔「ちょ、やめてよ~」
「でも、格好いいんだけど、ちょっとねえ」
智「ちょっとって?」
「「うーん、なんて言うか、残念なんだよねぇ…」」
智「ぷっ」
翔「は、なんすかそれ!」
智「ぷ、ぷぷっ、はっあははっ」
智「ちょ、智くんまで…」
も~ほんとやだ~と顔を隠す翔は、俺の事をいつの間にか『智くん』と呼ぶようになっていた。
酒の成せる業なのか、周りに釣られて自然と俺の名前を呼んでいた。
智「翔くんて、ちょっとヘンなんだよね~」
翔「へ、変!?」
智「いっつも、赤くなったり青くなったり」
翔「だからそれは智くんのせいなんだって!」
智「ええ~おれ、何もしてないよ?」
翔の懐に預けた頭をぐりぐり擦り付ける。
ぐりぐりやっては翔を下から見上げて笑う。
そうするだけで、翔は暖かい笑みを返してくれる。
潤んだ瞳で翔を見上げながら濡れた唇をパクパクと動かす。
『翔くん』と声には出さずに唇の形で伝える。
それだけで、翔は真っ赤になる。