不透明な男
第6章 暖と冷
…さと…智…
ああ、まただ
…智…っ…
え?
さ…と…
いつも温かくて優しかった声が
智…!
俺に、牙を向いた。
智「…っ!」
え?なんだ?
何の夢を見てた…?
目を見開いた俺は、汗で冷たくなっていた。
俺を得体の知れない虚無感が襲う。
その虚無感は不安へと変わり、恐怖となって俺にのし掛かる。
俺の体はガタガタと震え、冷や汗が顎を伝う。
俺の心に、黒く、冷たい何かが侵入してくる。
智「う…」
体を起こし、震えを止めようと腕を胸の前で交差させて自分をぎゅっと抱き締める。
智「…っ、く…」
胸が締め付けられる。
心臓を抉られる様に、ぎゅゅゅうっと苦しくなる。
智「くは…っ…」
苦しくて、胸を掻き毟る。
ボタンが引きちぎられる。
智「う…うぅ…っ」
ガチャ…
暗い部屋に光が射す。