
不透明な男
第6章 暖と冷
俺は翔を見上げると、両手で翔の濡れた頬を挟む。
智「なんで翔くんが泣いてるの…?」
翔「だ、だって…」
智「目がウサギみたいになってるよ?」
翔「仕方ないでしょ…」
智「俺の為に泣いてくれてるの?」
翔「智くんが、今、どんな思いしてるのかと思ったらさ…」
智「ほんとに…翔くんは、優しくてかっこいいな」
翔の鼻にちゅっと啄む様なキスをした。
翔「!?」
智「あ、泣き止んだ(笑)」
翔「もっ、もう!」
お願いだから俺で遊ばないで~と項垂れる翔が可愛いくて、つい笑ってしまった。
そんな俺を見て、翔も安心したように笑い返してくれた。
翔「取り合えず、着替え持ってくるよ」
智「着替え?」
翔「だって貴方それ…」
智「へ?」
自分を見下ろすと、薄暗い中でもハッキリ分かるほど俺はボロボロだった。
智「あら…」
翔「しかも汗でびちょびちょだし。風邪引いちゃうでしょ?」
智「ありがと…」
あ、それともシャワーする?と聞く翔に、もう遅いから着替えだけでいいよと服を借りた。
智「視線が痛い…」
翔「えっ」
智「ガン見してるでしょ」
翔「い、いやいやいや!」
ドアに凭れ掛かって翔がコッチを見ている。
薄暗い部屋のベッドの上で、翔に背を向けて着替えているのに、それが分かった。
シャワーを借りなかったのは、なんだか少しだけ、ヤバイ、そんな気がしたからだ。
ヤバイのは、俺だったのかもしれないけど…
