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不透明な男

第6章 暖と冷


瞼の裏が赤くなる。
その明かりで意識が戻る。


ああ…。あったかいな。


うっすらと目を開けると、目の前に翔の胸板があった。


智「ふふ…」


俺は、その胸板にぐりぐりと顔を擦り付けた。
翔の瞼がピクピクと動く。


翔「ん…」

智「翔くんおはよ♪」

翔「おはよ…って、うわっ!」


俺は翔にしっかりと抱き付いていた。
翔の腕は俺の頭に敷かれ、もう片腕は俺の背中に回されている。

腕の中から翔を見上げてニコッと微笑む。


智「…れ?翔くん?おーい?」

翔「って…うわわわわっ」


赤くなった翔が固まったかと思ったら急に暴れた。


どーん。

俺を弾き飛ばす。


智「いて…、なにすんだよぉ」

翔「ああっ!ご、ごめん!」


んも~と頭を擦りながら周りを見る。



…ここは翔くんの部屋か。一体どんな部屋…



智「ちょ!ちょちょちょ翔くん!」

翔「なっ、なに!?」

智「どっ、どろぼー!」

翔「ええっっっ!」


翔がベッドを飛び出す。
一目散に隣のリビングに向かう。


智「ま、まって!犯人いたら危ないよ!」


翔の後を追いかける。


翔「どっ、どこ!?」

智「あ、あ~よかった。いないみたいだね。」

翔「え?泥棒見たんじゃないの?」

智「見てないよ?見てないけど、ほら」


俺は床を指差した。


翔「え?」

智「だから、ほら」


きょとんとする翔に、もう一度しっかりと床を指差してみせた。


翔「…」

智「ね?」



ん?

どうした翔くん?







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