不透明な男
第7章 違和感
この間は嬉しそうな顔で話し掛けてくれたのに、今は無表情で俺に話してくる。
連絡が取れない事を怒っているのかもしれない。早くこの男に説明をしなければと思った。
潤「あの男とデキてんの?」
智「え?」
潤「朝。アパートから一緒に出て来たじゃん」
智「あ…、翔くんとはそんなんじゃないよ」
潤「…は?翔くん…?」
智「や、あのね」
潤は、俺が張り付けられている壁を拳で殴る。
智「…!」
潤「俺の事無視してソイツと仲良くやってんのか」
智「ちが…、ちょ、聞いて」
俺の胸ぐらを掴む。
潤の拳が俺を締め上げ、服がブチブチと悲鳴をあげる。
智「…っ」
潤「俺がどんだけ探したと思ってんだよ…」
智「く…」
潤「なあ」
智「くるし…」
潤「そっちがそう言うつもりなら、俺、もう我慢しないよ?」
潤は拳で締め上げたまま、俺の顎を持ち上げた。
氷の様な瞳が俺に近づいてくる。
思わず息を止めた俺の唇に潤が噛みつく。
智「ん…っ」
胸ぐらを掴んだ拳をほどき、俺の頭を両手で掴む。
がっちりと固定された俺の頭は首を振る事も出来ない。
唯一出来るのは、俺と潤の間に出来た僅かな隙間から胸を押す事だけだった。
その、少しの抵抗を見逃さなかった潤は、ぐぐっと身体を押し付けてきた。