不透明な男
第7章 違和感
廊下を通って潤の言う部屋の前まで来た。
潤「鍵、持ってんの?」
智「この鍵だけ持ってた。合うかわかんないけど」
俺は肌身離さず持っていたその鍵を見せた。
ニノがドアノブに向かって顎をしゃくる。
俺は、恐る恐るドアノブにその鍵を差し込んだ。
ガチャ
和「開いた…」
雅「やった…!」
俺は、心臓がおかしくなったんじゃないかと思った。
鍵が開いただけで、俺の手は震え心臓が早鐘を打つ。
俺は、鍵を差し込んだまま停止してしまった。
目は瞬きもせず、口はポカンと開いたままだ。
俺の手は震え、膝は体重を支えられそうに無かった。
潤「…智!」
俺は腰を抜かした。
自分の家に入る。それだけの事なのに、鍵が開いた事に驚いたのか、よほど嬉しかったのか、何故か身体に力が入らなかった。
和「一緒に入りましょう?」
ニノが俺を支えながら言う。
潤「…いや、それは駄目だ」
雅「なんで…?」
潤「智は家に入らせてくれなかった」
和「え?」
どんなに頼み込んでも足を踏み入れる事を許してくれなかった、と潤は言った。
潤「覚えてないからって、今入ったら卑怯だろ?」
雅「松本くん…」
和「意外とちゃんとしてんだな…」
俺を何だと思ってたんだと、潤は少し怒った。