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不透明な男

第7章 違和感


どうする?ひとりで入れる?と聞く皆に、また明日にするよと俺は答えた。

早く中を見てみたかったが、手は汗ばんで膝に力が入らなかった。


智「もうちょっと落ち着いてからにするよ(笑)」

雅「そうだね(笑) 家は逃げないから焦らなくて大丈夫だよ」

智「うん」


じゃあ戻って呑み直すかと、俺達は部屋を後にした。



その通路で、俺は声を掛けられた。


「智くん!」

智「…え?」


後ろを振り向くと、初老を迎えたかなという位のおばちゃんが立っていた。

おばちゃんは俺を見ると、満面の笑顔で嬉しそうに話しかけてきた。


「今まで何処に行ってたの!」


おばちゃんは俺の肩をバシバシと叩く。



あ、この感覚…



智「あ…、おばちゃん」

「んも~本当に長い間帰って来ないんだから」

智「ええ?」

「暫く家空けるねって出て行ったきり、何日経ったと思ってるの!」


おばちゃん本当に心配したんだよ?と俺に笑顔を向ける。


「も~誘拐でもされたんじゃないかとヒヤヒヤしてたんだから」

智「そんな心配してたの?おれ大人だよ(笑)?」

「可愛いんだからわからないでしょう?でも、無事で良かった」


3人はポカンとして俺とおばちゃんの会話を聞いていた。


和「あの…、この人、暫く帰れないって出て行ったんですか?」


あらお友達?とおばちゃんが会釈をすると皆も会釈を返した。


「そうだよ?ちょっと戻れないかも知れないからって」

智「おれそんな事言ってた?」

「忘れたのかい?おばちゃんがこの3ヶ月どんだけ寂しかったと思ってるの?」

雅「…3ヶ月?」

智「え、そんなに経った…?」

「ずっと首を長くして待ってたんだよ?」

智「あ、ああ、ごめんね?」


またご飯食べにおいでね、とおばちゃんは笑顔で去って行った。




…3ヶ月?

俺はあの廃墟で見つかるよりも前から家に帰ってなかったのか?

なんで…







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