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不透明な男

第7章 違和感


智「ん…」



あ…きもちいい…



智「んん…ぅ」



ああ…
とろけそう…



「智…」

智「ん…」



ん? だれ?

きもちいいんだから起こすなよ…



智「あ…?」

潤「ふふ…起きた?」


ぼーっとした頭で考える。
俺の腕は頭の横に力無く投げ出されている。
超至近距離に潤の顔。
俺の唇は温かく濡れている。


智「…俺の寝込み襲った?」

潤「キスしただけだよ」


そう言う潤の顔は幸せそうに微笑んでいる。


潤「やっぱり智だ」

智「なにが?」

潤「キスの仕方… 変わってないよ…」

智「え…?」

潤「今のキス気持ちよかったでしょ? 智の真似したんだよ」


どうやら俺はキスの師匠でもあったらしい。
潤の激しい押しに根負けした俺は、キスだけは潤に許していた様だ。


潤「智は仕方なくキスしてくれたけど…」

智「なに?」

潤「いつも、気持ち良さそうな…可愛い吐息を吐いてたんだ」


今の俺の甘い息が、前の俺と同じだと潤は言う。


潤「やっぱり身体は覚えてるんだよ…」

智「…んぅ…」


潤が柔らかい唇を俺に押し付けると、俺は自然と目を細めた。

潤が与える刺激に翻弄されてやる。
甘い息を漏らし、潤んだ瞳で潤を見つめてやる。


そうするとお前は、熱の篭った瞳で俺を見つめ返すんだ。

好きすぎてもうどうにもならないんだと、そんな感情の篭った瞳を俺にぶつけるんだ。



なぜだろうか。
何も思い出せないのに、それだけは分かった。






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