不透明な男
第8章 序章
まずはリビングからだなと、テーブルに目をやる。
テーブルには1枚の紙切れがあった。
…携帯番号?
だれの番号だろ…
取り合えずそれをテーブルに戻す。
その横には飲みかけの薬が乱雑に置いてある。
…!
俺は、ドキッとした。
心臓が少し爆発したんじゃないかと言うくらいに、1回だけバクッとなった。
その後もドキドキした心臓は鳴り止まない。
…この薬って、まさか…
その薬は、あの時廃墟で見たものとそっくりだった。
俺はいつの間にか震えてしまった手でそれを拾い上げた。
…やっぱりそうだと、俺は心臓が震えた。
あの廃墟で薬を飲んでいたのが俺だとしたら、薬はもう1種類ある筈だ。
何処だ、頼む、あってくれるな、俺は見つけてしまう事を恐れた。
しかし、探さずにはいられなかった。
ガサ…
あった。
空になったそれは、ごみ箱に捨てられていた。
精神安定剤と、睡眠薬。
何故だ?
俺は、こんなものに頼らなければいけないような生活をしていたのか?
薬を握り締めた俺は、只々茫然としていた。