不透明な男
第8章 序章
俺はいつの間にか眠っていた。
目を覚ました俺は温かい毛布にくるまれ、ベッドの上に居た。
え、なんで…
兄「あ、起きたか?」
寝室のドアが開いた。
そこには、優しい顔で微笑む松兄ぃが居た。
智「松兄ぃ…?」
兄「ただいま…」
静かに俺に近付き優しく抱き締める。
俺は、それを返すようにぎゅっと松兄ぃにしがみついた。
兄「何で泣いてた…?」
俺の頭を優しい手つきで撫でる。
智「タイミングよすぎ…」
俺の目から、また涙が溢れる。
兄「泣くな…」
智「勝手に出てくんだもん、無理だよ…」
兄「何があった?」
智「わかんないよ…」
何があったのか、何で泣いてるのか、自分でも全く分からなかった。
ただ、苦しい。それだけだった。
智「冷たいんだよ」
兄「え?」
智「なんか、心臓が冷えて…暖まらないんだよ」
兄「一体どうしたんだよ…」
智「わかんないよ…わかんないのに、苦しいんだよ」
松兄ぃは俺を慰める様に、額にふわりとキスをした。
智「そんなんじゃ足りない…」
俺は、自ら松兄ぃの首に腕を回した。