不透明な男
第8章 序章
智「あ…ぁ…」
松兄ぃは優しく俺に触れる。
俺を可愛がる様に、慈しむ様に、優しく、愛しく、俺の身体中にキスを落とす。
智「もっと…おれを、熱くして…」
何も考えたくない。
何も、考えている訳でも無い。
それでも苦しいんだ。
智「ん…」
優しい愛撫は気持ちがいい。
だけど、今の俺には足りないんだ。
智「松兄ぃ、おねがい…、もっと…」
俺は、せつなくて、苦しくて、どうしようもない瞳で松兄ぃにせがむ。
兄「甘えん坊のお前も可愛いな…」
智「あぁ、あっ…」
松兄ぃは俺の懇願に答えてくれる。
俺の下腹部の熱を弄びながら胸の突起にキスをする。
兄「これ…どうした…?」
智「痒かったんだよ…」
俺の首に残る紅い跡も、胸の掻きむしった跡も、分かっていても追及しない。
その跡すらも、優しく舌を這わせ、松兄ぃの唇で上書きする。
智「んん…っふ…」
兄「殺虫剤撒いとかなきゃな…」
ほんの少し、嫉妬が見えた。
智「あっ…あ、あぁ…」
兄「本当にお前は綺麗だ…」
俺の伸びてしまった前髪をかきあげ、俺の瞳をじっと見つめてくる。
未だ苦しい胸を抱えたままの俺は、今だけは、松兄ぃに俺の全てを委ねてしまおうと思った。