不透明な男
第8章 序章
あれから数日が経って今日は検診日だ。
俺は自分の家が分かったものの、未だ松兄ぃの家に居た。
もう一度あの家に足を踏み入れる勇気がなかなか湧かなかった。
松兄ぃはあれから特に俺に手を出す事も無く、俺もすがる様な真似はしなかった。
ただ、俺は寝室を分けようとしたが、夜中にうなされて暴れるもんだから結局同じベッドで寝る事を強いられた。
俺も甘える様な姿は見せたくなかったものの、朝目覚めると大体松兄ぃの腕の中に居た。
多分俺が抱き付いていたんだろう。
松兄ぃは何も言わずに只しっかりと抱き締めてくれている。
胸の冷えは解消しないものの、もやもやは募るばかりで、早くなんとかしなければと思っていた。
良かった、もうキスマークは消えてるな…
これなら大丈夫か
まあ、翔に診察してもらう訳でも無いんだけど、と何故か翔の事を気にしながら病院に向かった。
智「翔くん」
翔「大野さん。こんにちは」
翔は爽やかな笑顔を俺に向ける。
翔「もう診察は終わったんですか?」
智「うん、今終わったとこ」
翔「…まだ、寝られないみたいですね?」
翔は心配そうに俺の顔を見てくる。
智「…そんな事無いよ?結構寝てるよ」
翔「そんな嘘付かなくてもいいですよ。僕には分かります」
智「そういえば、翔くんってお医者さんだったね?」
翔「今までなんだと思ってたんですか…」
あははごめんと笑いながら翔とランチの約束をした。