不透明な男
第8章 序章
…プルル…プルル…
…ガチャ
◆「はい」
出た。
智「あ、あの…、大野と申しますが…」
◆「大野!?」
ひーどうしよう
全くわかんねえええ
◆「随分久し振りだな。今まで大丈夫だったのか?」
智「あ、あの」
◆「もうとっくに薬も切れてるだろう?寝られる様になったのか?」
智「え…」
薬…?ってこれか?
医者…?
俺はテーブルに置かれている薬を見た。
◆「大野?聞いてるのか?」
智「や、あのですね…えっと、とりあえず、会いたいんですけど…」
何故か俺はそんな事を口走っていた。
あれよあれよと話は進み、会う約束を取り付けられた。
◆「ずっとお前の様子が気になってたんだよ、早く来い」
智「あ、はい…」
あ、名前聞くの忘れた…
何処の誰かも解らない男と会う事になった。
しかし、この男はどうやら俺の事を気にかけていてくれた様だ。
どうやら前の俺も今と同じで寝られなかったのは間違い無さそうだし、この薬もこの男が処方してくれてたんだろう。
前の俺が、また一歩近付いてきた。
そんな気がした。