不透明な男
第8章 序章
俺が東山先生と出会ったのは3年前だ。確かにそうだ。
なのに先生は3年前と聞いて怪訝な顔をしていた。
東「…自分の名前、フルネームで言ってみろ」
智「おおのさとし?」
東「歳は?」
智「26さい」
東「1+1は?」
智「2…ってなにコレ」
いくら俺がバカだからってそれ位わかるよ、なんて俺は能天気に笑っていた。
それに対して東山先生は至って真面目な顔をしている。
東「じゃあ… 俺と出会った時、お前はいくつだった?」
智「ん? えーと、3年前だから23歳」
東「いや…、初めて会った時、お前は18歳だったよ」
智「え…?」
え、なに言ってんだ、そんな訳無いだろう確かに3年前の筈だと俺は食い下がった。
東「いいや、確かにお前は18歳だった。今から8年前だ」
智「8年…?」
絵に描いた様に俺はパニックに陥った。
智「え?え、なに?どういう事?8年って…は?」
東「大野、落ち着け」
智「え、だって、3年前に初めて会ったんだよ?確か…えっと、何で知り合ったんだっけ。あっ、そうだ、診察して貰ったんだよ」
東「大野…」
智「…何で診察して貰ったんだっけ?えっと、確か…確か……あれ? えっと」
俺はくたびれたソファーから立ち上がり、混乱する頭を抱えながらごちゃごちゃした部屋を歩き回っていた。
東「大野、焦るな。落ち着け」
智「や、だって」
東「取り合えず、座ろう。な?」
混乱してウロウロする俺を先生が捕まえる。
俺の腕を掴むと、俺をゆっくりソファーに座らせた。
8年…?
どういう事だ?
なんだよ…、せっかく先生の事覚えてると思ったのに。
結局訳わかんないじゃん…