
不透明な男
第8章 序章
兄「泣くな…」
智「そっちでしょ…」
松兄ぃは、俺の肩に顔を埋めたまま小刻みに震えている。
兄「俺は泣いてない」
智「おれもだよ」
ピーピーと電子音が鳴り響く。
智「お風呂いこ」
兄「ああ」
智「…おれを洗って♪」
兄「…ピッカピカにしてやるよ(笑)」
なんで今頃なんだ、さっき甘える時間いっぱいあっただろなんて笑いながら、俺を抱き抱えバスルームに連れていく。
俺は、松兄ぃに笑顔が戻ってほっとした。
ニコニコと笑いながら、俺は、大人しく松兄ぃにバスルームに放り込まれた。
兄「先に流してやるから、ちょっと待て」
智「うん」
松兄ぃがシャワーを温めてくれるのを大人しく待つ。
ぽけっとしながら突っ立っている俺を見て、松兄ぃは笑う。
兄「お前は子供か(笑)」
智「んふ」
兄「ほら来い」
俺はすがり付く様に、松兄ぃの差し出された大きな手を掴んだ。
松兄ぃは優しく微笑むと、俺を腕の中に閉じ込め、俺の背中にシャワーを当てる。
その暖かさに、俺は思わず目が潤んだ。
