
不透明な男
第1章 記憶の無い男
智「あ…はぁ…はぁっ…」
俺はまだ男の中でビクビクと脈打っている。
脈が収まると、俺をじゅるっと吸い上げちゅぽんっと口から引き抜く。
はぁ…はぁ…
なんだよ…これ…
おれ、イッちゃったじゃねぇか…
だめだろこんなの…
俺は、ぜぇぜぇと肩で息をしながら薄く開いた目の中に抗議の色を含ませ男を見る。
男はそんな俺を熱を持った目で見ながら、ごくんっと喉を鳴らす。
男「その目だよ… お前のその瞳が、俺を煽るんだ。」
額に張り付いた俺の前髪を掻きあげ、俺の瞼に唇を落とす。
男「その薄く開いた唇から覗く赤い舌も…。」
瞼から唇に移動する。
ふわっと俺の唇に触れ、舌でペロッと俺の半開きになった唇を舐めた。
あれ…
おれの…せーしは?
まさかコイツ、飲んじゃった…?
男の行動に気付いた俺は呆然と男を見下ろす。
薄く開いた瞳は潤み、半開きの口許からは未だに浅い呼吸が漏れている。
智「どこに…やったの…?」
男「ん…?」
智「おれの…出したやつ…。」
男はニヤリと笑うと自分の唇をぺろりと舐めた。
智「…っ、まさか…飲んじゃったの…?」
男「あぁ」
智「なにやってんだよ…なんなんだよ、もぅ…。」
俺が溜め息を付いた途端、視点がひっくり返った。
男が俺をひっくり返した。
驚く俺の背に男が覆い被さり耳許で囁く。
男「安心するのはまだ早いよ。」
ぎょっとした俺はもがく。
男の体の下から這い出ようとシーツを掴む。
な…
なに言ってんだコイツ…
…わかんねーけど、絶対ヤバい…
体重を掛け、俺を引き留める。
シーツを掴んだ両手を男の手が押さえ付ける。
智「んっ…」
唇が背中に吸い付く。
熱い舌が首筋から背筋を這う。
また俺の身体がビクビクと震える。
ゾクゾクした感覚で身震いする。
シーツをぎゅっと掴む。
