不透明な男
第9章 もうひとりの俺
おじさん達に囲まれているせいで、俺は周りから見えなくなっていた。
それを意図してやっていたのか、おじさんが俺に近付く。
智「んん…っ、お、おっきいよ…」
唇に果物が押し付けられる。
俺は仕方なくもぐもぐと貪る。
「そんな食べ方しちゃ駄目だろう… 零れてるよ…」
ニヤニヤした顔が迫ってくる。
智「けほっ…、ち、近いですって…」
これはヤバいな
何なのそのいやらしい顔。
俺は片手を頭上に掲げ、ひらひらと振る。
智「ちょ、誰か… たすけて…」
囲んだおじさん達の上から見える様に手をぷるぷると伸ばす。
和「大野さんっ」
潤「ちょっと…、この人返して貰っていいかな?」
雅「ほらほら大ちゃん、皆来たからこっちおいで?」
困り果てた俺に救いの手が差し伸べられた。
和「んも~、一体何やってんのよ」
智「だ、だって」
雅「だってじゃないでしょ?気を付けないと」
智「す、すいません…」
潤「くっそあのオヤジ。一発殴って…」
ちょちょちょ、落ち着いてと相葉ちゃんとニノが宥める。
雅「はいはい、仕切り直そっ!かんぱーい」
相葉ちゃんがさっさとお酒を用意してくれる。
俺達は久々の会瀬に乾杯をした。
和「最近どうしてたの?全く来ないんだから」
潤「もう家行った?」
雅「何か思い出した事ある?」
久し振りに会ったもんだから、皆口々に質問を浴びせる。
智「あ~、えっと」
俺は1週間程前から自分の家に住むようにしたと話した。
和「そうなの?」
潤「いや、良かったわ。得体の知れない奴の所やっと出たのか」
智「得体の知れないって…(笑)」
和「本当潤くんの言う通りだよ。これで安心ですね」
智「ほんと世話になったんだからそんな事言わないで(笑)」
雅「まあでも、確かに大ちゃんの言う通り感謝した方がいいかもね」
和「はあ?だって何かされてるかも知んないじゃん」
潤「どうなの?何もされてないよね?」
智「えっ、う、うん」
ちょっと何今の間!と皆に突っ込まれたがなんとか誤魔化した。
だって、俺の方が甘えてたんだぞ。
そんなの言える訳無いだろ…。