不透明な男
第9章 もうひとりの俺
お願い、後生だから帰らないでと、時代劇さながらにすがりついてくるニノが健気で俺は帰れなくなった。
智「なんだよその頼み方(笑)」
和「我慢したんだからこれくらい聞いてよ」
智「もうお前…、そんな顔して言われちゃ帰れないだろ(笑)」
和「やった!」
やったあ、わあいと跳ねながら喜ぶニノを見てると自然と顔がほころぶ。
智「もう…、ほんと可愛いんだからやめて(笑)」
可愛いのとおかしいのとで、俺は笑いが止まらなかった。
ちゃちゃっと交代でシャワーを浴びるとベッドに寝転ぶ。
智「ほら、おいで?」
和「いいの…?」
智「お前のベッドでしょ」
ニコッと笑ったニノが俺の胸に飛び込む。
智「あ、言っとくけど可愛い顔すんなよ?」
和「なんで?」
智「煽られちゃうから」
和「…こんな顔?」
俺の胸にピタッとくっついたまま上目遣いで見つめてくる。
智「…ああ、もう駄目。おれ、帰る」
和「えっ、ま、待って!」
智「次やったらほんとに帰るからな?」
コクコクと高速でニノは頷いた。
和「なんかさ…、皆、アナタの事可愛いって言うじゃない?」
俺の胸に顔をくっつけたまま、背中に回した腕できゅっとしがみつきながらニノが話し始める。
俺も片腕をニノの上に回し、ふわっと抱いたまま話を聞く。
和「アナタの事、喰っちゃいたいって皆言うけど」
智「ん?ん~」
和「俺もそう思っちゃう事も無くはないけどさ。でも、やっぱ俺は、違うんだよね」
智「うん?」
和「確かに中性的で、凄く魅力的なんだけど…、その中にもやっぱ男の部分があって」
智「え、おれ?」
和「うん。最初はその中性的な部分に惹かれたんだけどね?そこから出てくる男の大野さんが凄くかっこよくてさ」
はぁ…と、溜め息をひとつ吐きながらニノは話し続ける。
和「そんな顔してるのに、首とか腕とか血管浮いちゃったりしてさ…。」
それが凄くかっこよくてエロくて、セクシーなんだとニノは熱弁した。