不透明な男
第9章 もうひとりの俺
智「ニノ~、そろそろ起きろよ~」
和「…んん」
先に起きてリビングにいた俺は、寝室のドアを開けニノを呼ぶ。
和「起こして…」
智「…ほんと、お前は甘えんぼだな(笑)」
ベッドから伸ばされた手を掴み、よいしょと抱き起こしてやった。
そのまま俺の胸にしがみついて可愛い顔を擦り付ける。
智「お…、こらこら。やっと朝勃ち収まったんだからやめろって(笑)」
和「ええ~」
え~じゃないよ、早く来なさいとリビングにニノを連れていく。
智「朝メシ作ったから早く食べて。仕事でしょ?」
和「……なんでこんなの作れるの」
智「パン焼いただけだよ(笑)?あと、目玉焼きとコーヒーだし」
和「俺の家、知ってなきゃこんなん用意出来ないじゃん…」
立ち尽くしたままのニノが綺麗に並べられた皿を見て言う。
和「これも、俺のお気に入りのカップだし…。それにあのお皿。なんで使わなかったの?」
カップボードを指差してニノは話す。
和「一番取りやすい所に置いてあるのに…。あれはお気に入り過ぎて使えない、観賞用だって知ってなきゃ、わざわざ避けないでしょう…?」
智「え…」
そうだ、あれは俺がニノにプレゼントしたんだ。
わざわざ土から焼いて絵を描いた。
その皿を使おうとしたら、ニノにこっぴどく怒られたんだった。
割れちゃったらどうすんだよ、世界に一枚しかないんだよって、俺から奪い返して大事に飾ってた。
智「…たまたまだよ。なんかわかんないけど、体は覚えてるみたいだ(笑)」
和「本当に思い出してないの…?」
疑いの眼差しで俺を見てくるニノを無理やり席に座らせる。
智「ほら、冷めちゃうだろ?早く食べな?」
和「うん…。ありがと、いただきます」
ニノは、小さく手を合わせるとパンにかじりついた。
お前は勘が鋭いから肝が冷えるんだ。
もう少し単純になった方が良いよ。
そうだな…、少しは相葉ちゃんを見習え。