不透明な男
第9章 もうひとりの俺
翔「え、え?なんで大野さんが?」
智「だってここ、すんごい居心地良かったからさ。だめだった?」
だっ、駄目じゃない、駄目なんかじゃないよ!と翔は、手と頭をぶんぶん振る。
「そうかぁ~、居心地良かったかあ…。俺は、そんな事言って貰えるなんて…」
智「えっ、な、泣かないで」
「嬉しいよ智!」
むぎゅっ
智「ぐふっ」
翔「あっ!ちょ、智くんが潰れちゃうでしょっ!」
翔が俺に抱き付くオーナーを剥がす。
智「…けほけほっ、あ~、死ぬかと思った…」
翔「…んぷっ、くっ、く」
智「…何わらってんの」
翔「や、ちっこくて可愛…」
智「え?」
翔「いえ!何も!」
智「いや、なんか言ったじゃん」
何故か顔を赤くして顔をプルプルと振る。
そんな翔を見てると、少し心が暖まる感じがした。
翔「智くんこそ、ニコニコしてどうしたの?」
智「ん、おれ? 翔くん可愛いなあと思って」
ボッ
久し振りに翔が火を吹いたらしい音が聞こえた。
翔「かかか、可愛いって貴方」
智「ほらそれ。真っ赤だよ?」
だからからかわないでっていつも言ってるでしょうと、翔は両手で顔を隠した。
「こんな挙動不審な櫻井さん見た事無いですよ(笑)」
「オカシイのはいつもの事だけど、ねえ?」
翔「きょ、挙動不審って」
智「いつもそうだよ?」
翔「お、オカシイって」
智「…結構そうだよ?」
翔「………」
翔が俺の顔をじっと見るもんだから、おれもじっと見返した。
智「どしたの?」
翔「いえ、何も…(泣)」
智「え、どしたんだよ(笑)」
翔「ほっといて下さい…」
肩を落とす翔が可笑しくて、俺は声を出して笑った。
智「ぷっ、しょ、翔くん、っく、くくっ、や、矢印みたいになってるよ…っ」
翔「!」
「さ、智さん!それは言っちゃ…、ぷぷ」
智「だ、だって、くっ、はっ、あは、あははっ」
ひーおかしいと涙を流して笑う俺の隣で、翔は溜め息を吐いていた。