不透明な男
第9章 もうひとりの俺
智「いやあ、やっぱりここはいいね」
「しゃとしぃ~」
智「ほんと、楽しかったよ。ありがとねオーナー」
「嬉しい事言ってくれるじゃねえかぁ…っ」
オーナーは俺をぎゅうぎゅうと抱き締める。
智「んふっ、く、苦し、潰れちゃうよ(笑)」
ほらほらオーナー離れて下さいよと、スタッフが引き剥がす。
智「皆も、ありがとね?また来るよ♪」
「はい!いつでもお待ちしてます!」
智「じゃ、また~」
「あっ、さ、智さん!」
智「ん?」
「これ…、置いて行くんですか?」
ん?これ?と指の指された方へ顔を向けた。
翔「ンゴゴ……」
智「………」
んもう、仕方ないなぁと翔を担ぐ。
翔「ねえ、翔くんの家って近くだよね?どっちだっけ?」
「出て右ですよ。1本目の細道入ったらすぐアパートありますんで」
智「ん、わかった。またね?ありがと♪」
「こちらこそ!お気を付けて!」
夜風に当たりながら翔を引きずる。
智「ほら、翔くんしっかり」
翔「んんん…」
ほぼ足が動いていない翔を、なんとかアパートまで連れてきた。
智「翔くん、部屋どこだっけ?奥の方だったよね?」
翔「ンゴゴ」
智「…こんな状況でよく寝れるな(笑)」
律儀に表札を出しているおかげで翔の部屋を見つける事が出来た。
智「鍵は?翔くん、かーぎー」
翔「んん~、ンゴ」
智「…まったくもう」
ポケットを漁ると、翔は少し笑った。