不透明な男
第9章 もうひとりの俺
B「いつも社長と何してんだ?」
智「…」
A「お前は随分気に入られてるからな…、まさか…」
智「…」
B「社長は綺麗な男に目がないって噂だし…、ま、まさかマジで?」
智「はぁ…、御言葉を戴いていただけですよ」
B「寵愛の御言葉か?」
智「バカなんですか貴方は」
B「ぐっ、ち、ちきしょう可愛いじゃねえか…」
A「悪いな、こいつマゾなんだ」
智「………」
俺の冷めた目を見て興奮する。
マジでこいつはバカだ。
もう少しでもやもやが繋がりそうだと言うのに、こいつらのお陰で先が思いやられる。
まぁ俺も、本当の所はビビッて先に踏み込め無いだけなんだが。
バラバラな俺の記憶。
もう少しで繋がりそうな俺の記憶。
その鍵を、本当にあの男が持っているのだろうか。
今の俺はあの時の様に不確かだ。
だけど
3年前の息を切らせて走ったあの時、瞬間的に感じたもの。
今の俺は、それを信じるしかないんだ。
東『大野?』
智『せ、んせ…』
東『……おい、お前、顔色が…』
智『おれ…バカだ……』
東『大野?…おい、どうした……大野!』
東山先生の腕の中で意識と共に俺は、記憶まで手離してしまったんだ。