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不透明な男

第9章 もうひとりの俺


首がいてえ…

デカすぎるんだよ…



俺はとある豪華ホテルに来ていた。
今日はここで会食があるからと警護を任されていた。

そんな俺は見知らぬ黒人に捕まって何やら問われていた。


智「……は?」


身長190㎝はあるだろうかと言うデカい黒人は俺を見下ろしながら訳の分からない言葉を投げ掛けてくる。


智「あ、あの…、英語が話せないので他の人に…」


こいつもBGだろうか。大きな体にがっしりとした筋肉が付いている。
至近距離で話しかけるこの黒人を、俺はほぼ真上を見る様に頭を上げていた。



黒いスーツだし…

でも、こんな奴見た事無いんだけどな…



一瞬ふと、気が緩んでしまった。


智「うわ…っ」


その一瞬の隙を突かれ、俺の体は宙に浮く。


智「ちょ…、え、お、降ろして下さいよ…」


男はひょいっと俺を肩に担ぎ上げスタスタと歩く。





…ドサッ


智「え、ちょっと…、一体何なんですか?」


ある客室に辿り付いた男は部屋に入ると俺をベッドに投げ出した。

直ぐ様起き上がろうとする俺を大きな体で押さえ込む。


智「ぼ、僕は勤務中なんです。どいて頂けますか」

「☆§&%¥℃∞∴°※…」


何を言っているのかさっぱり分からない。
ただ、なんとなく『キュート』と単語が聞こえた気がする。


なんだ結局コイツも俺が気に入っただけなのか。
要するに、どうにかしてやろうと俺は連れ込まれたんだな。



しまったな

ちょっとコイツはデカすぎるぞ…



いくら俺が動けると言っても、やはり体格差は歴然だ。
こんな大きな奴に押さえ込まれちゃそう簡単には逃げられない。

だから、大きな奴に対しては『捕まる前に捕まえろ。それが出来なきゃ逃げろ』そう岡田に教えられていた。

なのに俺は、は?英語?と油断してしまったんだ。



これはやべえぞ岡田…

護身術なんて役に立たなそうだ…




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