不透明な男
第9章 もうひとりの俺
何かのテレビで言っていた。黒人のアレはくそデカいんだと。
やべえ。やべえぞ。
そんなの突っ込まれた日にゃ…
死んじゃうんじゃないだろうか、と想像しただけで背筋が凍る。
ひきつった笑顔でなんとか男を宥めようとする俺に、なおもこの黒人は英語を連ねる。
智「や、何言ってるかわかんないですし…、と、取り合えず離れて…」
男はニヤニヤと笑いながら俺のネクタイに手を掛ける。
どうしよう。マジでヤバい。
このまま暴れ倒すか、それとも油断させて出来た隙に逃げ切るか。
いやしかしこの男に隙が出来るとは限らない。
もし隙が出来なかったら俺は確実にヤラれるな。
こんなデカい奴相手に一体どうしろと…。
頭をフル回転させてみたが結構パニックに陥っていた俺は考えがまとまらずに取り合えずもがいてみた。
智「んーーっ、く」
デカいし重いし何より力が凄い。全くだ。ビクともしない。
暴れて疲れた俺を見ると、男はよりいっそうにやけた。
…仕方ない。
一か八か、その気にさせてみるか…
俺は脱力して諦めた様な顔をしてみる。
背けた顔から潤んだ瞳だけを男に向け、小さく息を切らせた。
男はヒュウッと小さく唇を鳴らすと俺のネクタイを素早く引き抜く。
俺の頭を大きな片手でがっしりと掴み、唇を奪うと胸のボタンをいくつか外してきた。
まだか…
なかなか隙の出来ない男は、俺のベルトに手を掛けた。
カチャカチャという金属音に背筋がゾクッとする。
俺の下着の中に手を滑り込ませると、俺の体は反射的にビクッと震えた。
今だ……!
おもいっきり股間を蹴りあげてやろうと思ったその時、俺の視界が開けた。
智「……ん?」
なんだ?と俺は体を起こしキョロキョロする。
すると、ベッドから落ち床に蹲る男が見えた。