不透明な男
第9章 もうひとりの俺
床に蹲る黒い巨体。
その男は立ち上がると後ろを振り向いてベラベラと訳の分からない言葉を捲し立てる。
B「あ~、だから……#%€$‰₩*¢£」
そこにはAとBが立っていた。
何故だか分からないがあの黒人と何やら話している。
A「……て、事だ。失せろ」
黒人は鼻血を拭いながらチッと舌打ちをして部屋を出て行った。
智「……は?」
B「大丈夫かよ?俺の、可愛いこちゃん……」
智「え」
乱れた姿のままベッドで呆然としていた俺は、また押し倒される。
智「ちょ…」
B「んん~っ」
ぶちゅ
智「…っ、何すんだよ!」
B「いってえ!なんだよ、殴る事無いだろっ」
A「助けてやったんだからありがとうだろ」
智「……どさくさに紛れてこんな事する人達に礼を言えと?」
Bは俺を押し倒しキスをしたし、Aは俺のズボンを下げようとしていた。
智「…どうしてここが分かったんですか?」
俺はコイツらを振り払うと、身だしなみを整えながら聞いた。
A「ああ、お前じゃなく、あの黒人を呼びに来たんだよ。そしたらアイツに押し潰されてる可愛い頭が見えたんでな」
智「は?」
どうやらあの黒人は社長が外国から呼びつけた専属BGらしい。
相当な腕利きの様で、ハリウッドセレブの護衛なんかもやっていたと言う。
B「正式には今日から働く筈だったんだけどな。でもまあ……、クビにしてやるよ。安心しな」
智「貴方そんな権限あるんですか…」
コイツの言う通り、あの黒人は早速クビになった。
正確にはコイツが社長に告げ口した事によって社長がブチ切れたと、そういう訳らしいが。
B「良かったな。もうこれで心配無いぞ」
智「まだまだありますけどね…」
お前らだよと心で突っ込んでいた所に秘書から連絡を受けた。
社長がお呼びです、と。