不透明な男
第10章 視線
医「はい、息を吸って…」
智「すぅ~」
医「吐いて…」
智「はぁ~」
一見すると普通の診察だ。
だが、これは普通じゃないと思うんだ。
だってこの医者、俺の乳首を確実に掠めてくる。
智「あ、あの、先生」
医「どうかしたかな?」
智「や…、あの、おかしいですよね?」
医「何が…」
コイツとうとう聴診器そっちのけで乳首を摘まみやがった。
智「そ、それ…」
医「これは…、触診だよ」
はあ?でも乳首は摘ままないだろ普通。
医「うん、じゃそのままベッドに横になって」
おかしいな…
ただのエロ医者なのかな
なんもピンと来ねえ
智「え…、べ、ベルト外す必要あります?」
横たわった俺のベルトを、いつの間にかカチャカチャと外そうとしている。
智「ちょ…や、やめ」
医「ふふ、君は本当に変わらないね…」
智「…は?」
医「身体は大人になったみたいだが、その困った顔は8年前と同じだよ…、智君」
あ……
コイツか…
そうだコイツだった
智「え…、8年前って…?」
医「変わらないね、今もまだ美しいよ」
俺の肌に手を伸ばし、触診と言う名の悪戯を始める。
智「な、何を…」
医「あの頃のままだね。いや、少し筋肉が増えたかな…」
智「あ、あの頃って、どういう…」
医「只、君を可愛がる前に邪魔が入ってしまってね。それが心残りで仕方無かったんだよ」
医者は、俺の胸に手を這わせながらうっとりと見つめてくる。
医「あの時、東山さえ邪魔をしなければ、君は俺のものだったのに…」
ああ、なんと言う巡り合わせだ、神様は居るんだなと医者はブツブツと呟きながら俺の首筋を舐め回してくる。
コイツ…
頭おかしいんじゃねえか……
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