不透明な男
第10章 視線
き、気持ちわりぃ…
生温い感触が気持ち悪くて鳥肌が立つ。
ゾクゾクして身震いすると医者はニヤニヤと歓ぶ。
医「ん…?気持ち良いかい?」
んな訳ねえだろ何処見てんだと殴りたくなる衝動を押さえる。
まだちょっと早いな
少し煽っとくか…
智「んん…、や、やめ…」
コイツは俺が震えて怯える姿を見て歓ぶタイプだな、言うなれば変態だ。
医「どうしたの…?怖くないからね…」
外しかけていた俺のベルトを完全に外すと、ファスナーを下ろし、下着の上から手を添える。
智「せ、んせ…、や、やめて…」
医「大丈夫だよ。誰も来ないんだから諦めなさい…」
にやにや笑いながら荒い息を吐いてくる。
医者は俺の下半身を触りながら乳首に吸い付いて来た。
智「んん…っ」
俺は非力な振りをした。
ちょっと力を入れれば跳ね返せるが、全く抗えないとでも言う様に、両手をプルプルと震わせ男の胸を必死に押し返す仕草をした。
とどめに涙目。
その潤ませた瞳で医者を見つめてやる。
今にも泣き出しそうに眉を歪ませる。
智「お、おねがい…やめて…」
一際鼻息を荒げた医者はがっつり俺に覆い被さった。
その時、俺が部屋に入ってちょうど15分。
ガラッ
婦「……何をしてるんです?」
智「あっ、た、助けて!」
婦長の方を振り返った医者を跳ね飛ばし、俺は婦長に駆け寄る。
婦「大野くん!一体どうしたの!?」
智「せ、先生が…」
婦長は目を見開き俺の姿を見る。
俺の服は乱され、髪はぐちゃぐちゃおまけに涙目だ。
その上震える手で婦長にしがみついた。
婦「……先生!一体何をされてたんです!!」
医「いや、あの、こ、これは…」
誤解だ、検査をしていただけだと言い訳を医者は述べるが、頭に血が昇った婦長には通じなかった。
婦「ちょっと…、誰か!誰か来て!!」
通りすがりの医者が駆け込んできて変態医師は御用となった。
俺のカンは当たっていた。
あいつ、何かあるなと思っていた。
お前も早く医師免許を取り消してもらえ。
これで、少しは恩返しが出来たかな?東山先生…