不透明な男
第10章 視線
ちょっと俺は腹が立っていたんだ。
俺がキスしたなんて、そんな大事な事を黙っていた翔に対して。
だから悪戯が止まらなかった。
智「それとも、嫌がる俺を押さえ付けて無理矢理キスしたの…?」
俺は目を細めて翔を覗き込む。
ゴクッと、翔は生唾を飲んだ。
智「まあでも、俺が2回も翔くんの唇奪っちゃったんだもんね」
顔を赤らめて固まる翔が可愛そうになってきた。
ちょっとやりすぎたかな、と許してやる事にした。
智「そのせいでヘンな夢見たんだねきっと」
翔「え、いえ…」
智「だって翔くんノーマルでしょ?そんな夢普通見ないよ(笑)」
きっと男にキスされて衝撃受けたんだね、なんて笑いながら言ってやる。
翔「本当に夢なのかな…。だって今のセリフ」
智「ん?」
翔「翔くんノーマルでしょ、って、夢の中で大野さんが」
あ、やべえ、確かそんな事言ったなと思い出した。
智「やらしいな…。夢の中のセリフまでコントロールしないでよ(笑)」
翔「え、じゃあ、やっぱり夢?」
智「当たり前でしょ。一体どんだけ俺の事コントロールしたいんだ」
翔「いえそんなっ」
智「あんな事してこんな事して……って、やらし」
翔「ち、違います!」
智「まあアレだ。その夢も、一時の気の迷いってやつだよ」
翔「…結構いろんな言葉知ってるんですね」
智「………」
だから、俺の事どんだけバカにすりゃ気が済むんだと翔を睨んだ。
翔「いややややっ、ご、ごめんなさい」
智「はぁ、もういいよ(笑)」
一時の気の迷いか…
おれは、どうだったんだろうな…
やっぱり悩み事が増えちまったなと、俺は翔を少し恨んだ。