テキストサイズ

不透明な男

第10章 視線


顔の濃い男が俺を見つけて手招きする。
こっちこっちと、遠目から見ても嬉しそうなのが分かる。


智「潤」

潤「やっと会えたね」


おいおい、俺の恋人かよと心でツッコむ。


潤「智とふたりで呑むのって初めてだから、嬉しいな」


なんだコイツ、やっぱ可愛い奴だなとウキウキしながら歩く潤を見る。


智「そんな嬉しいの?」

潤「当たり前でしょ」


ほんとドストレートだな、こっちが照れるわ。

実を言うと、ちょこちょこ、いやかなり頻繁に潤から連絡があった。

智に会いたい、智に触れたい、智の顔が見たいんだと、それはそれはしつこかった。

最近はBGが終わるのが遅い事も多かったし、何より一旦髪を洗いに帰らなければいけないのがめんどくさかった。

だからずっと誘いを断ってたんだ。

だけどさすがに、ちょっと可愛そうになってきた。
だから今日は会うことにしたんだ。


潤「どう?美味しい?」

智「うん、うまい」


でしょ?コレ絶対智に食べさせたかったんだと潤は無邪気に笑う。


智「ほんとにお前は可愛いね?」

潤「ふふ、もう酔ってるの?」

智「まだ酔ってない」


顔は濃いし服は派手だし、なんかギラギラしてる。
一見怖そうにすら見える奴なのに、俺に甘えてきてなんだか可愛いんだ。

その気持ちをつい口走ってしまった。

その俺の甘い言葉を聞いた潤は嬉しかったのか、俺にガンガン酒を注いでくる。


潤「ほら、のんでのんで」

智「お前、おれを酔わせてどうする気なの」

潤「ふふふ」


潤が怪しく笑う。だけどそれも甘えん坊な表情で、俺から見たらすごく可愛いんだよ?

ってバカ。そうじゃなくて。

俺は潤に聞きたい事があったんだった。



酔っちゃう前に聞かなくちゃ…




ストーリーメニュー

TOPTOPへ