不透明な男
第10章 視線
智「ねえ潤、おれさ」
潤「ん?」
智「しょっちゅう引っ越してたって言ってたじゃん?あれ、なんで?」
潤は俺の家を知っていた。
だけど、俺はしょっちゅう引っ越してたと言っていた。
家にも入れてないんだから理由は話してないかもしれないが、何か知ってる事があるかもしれないと、俺は潤に聞こうと思ったんだ。
潤「なんでって…、詳しくは知らないけど、落ち着かないんだって言ってたよ?」
智「落ち着かない?」
潤「うん。何処にいても落ち着かないんだよね~とか言ってはぐらかしてた」
はぐらかしてたのか…
おれのバカめ
智「なんでもっと突っ込まないんだよ」
潤「いや、突っ込んだよ」
智「お前のしつこさなら聞き出せるでしょ」
潤「いやいやいや、智は頑固だから」
しつこく聞けば聞く程、智は口を割らなかったと潤は言った。
潤「なんか、俺に心配掛けない様にしてた感じかな…」
智「ああ、わかるわ。お前、おれの事になると人が変わるからね…」
んだよも~役に立たねえなと潤を情けない顔で見た。
潤「智が優しいから悪いんだ」
智「はい?」
潤「俺が心配すると、智はそんな俺を心配するんだ。そしたら、俺はもう何も言えないよ」
そんな顔をするな、おれは大丈夫なんだからお前は笑ってろ、俺はそう言って心配する潤を宥めたらしい。
智「……まあ、呑め」
潤「え、照れてるの?」
智「照れてない」
そういう俺の顔は熱かった。
俺がそんな事を言ってたなんて、そりゃ恥ずかしいだろう。照れるに決まってる。
そんな俺は、顔の熱さを酒で誤魔化そうと潤を巻き込んで酒をグビグビと呑んだ。