不透明な男
第10章 視線
智「ふふ、わかんなくていいよ」
潤「なんだよそれ。狡いな…」
智「そうだよ、おれは狡いんだ」
ふわっと笑うと潤を抱き締めてやる。
すると、拗ねてた筈の潤も、ふふっと笑いながら俺に抱き付く。
潤「ああ、気持ちいいな…。智は暖かいね」
智「結構呑んじゃったからね」
ベッドで寝転ぶ俺は潤を胸に抱き締める。
俺の胸に埋まっている潤は、少し顔を上げて俺を覗き見る。
潤は無邪気に笑いながら俺の頬に手を伸ばす。
潤「ね、もっかいだけ…」
智「だーめ」
潤「くっそ、頑固だな」
智「ふふっ」
そうか、場所が悪いんだなと、俺はソファーに移動した。
潤もぶつくさ言いながら着いてくる。
智「ね…、おれ、ひょっとして潤の家に泊まりに来てた?」
潤「いや?智は泊まらなかったよ」
俺の前にコトンと潤がカフェオレを置いた。
智「ありがと」
潤「ん。で、何でそんな事聞くの?」
東山先生の所じゃ無かったら誰かの家を泊まり歩いていたのかもしれないな、と思っていた。
相葉ちゃんの所でニノに会うと、必ずと言っていい程ニノの家に泊まった。
だけどそれもそれほど頻繁ではない筈だ。
そもそも相葉ちゃんの店に行く事が少なかったんだから。
じゃあ他の日は?そうか、潤かもしれない。そう思ったんだ。
潤「智?」
智「あ、ああ…。や、倒れる前に家に帰ってなかったって言うからさ。何処に行ってたのかなと」
潤「ああ、確かにね…。え、まさか」
智「え、なに」
潤「まさか、俺に黙って恋人作ってたんじゃないだろうな」
智「は?」
潤「だって、家じゃなかったら恋人の所位しか」
智「え、いたの?」
潤「知らないよそんなの!」
いないだろそんなの
いたら今頃連絡くらいくれてるさ
智「いないでしょきっと」
潤「……ほんと?」
智「知らないけど」
なんだよそれ!と潤が泣きそうになった。
智「い、いやいや、いないよ。居たらさすがに分かるでしょ」
本当コイツは怒ったり笑ったり拗ねたり泣いたり…。
こんな姿は俺にしか見せないんじゃないだろうか。
だから可愛いんだ。
だから大事にしなきゃ駄目なんだよ。
お前は俺の事になると、凄く心配するし凄く怒るんだ。
だから、お前に話せない事もあるんだよ。