不透明な男
第10章 視線
智「ふぅ…」
俺は熱いシャワーを浴びていた。
社長の所から戻ると、先に仮眠を取る様に言われ綺麗な客室に来ていた。
智「面倒くさいんだよな…」
頭と体をしっかり洗った後、髪を乾かし黒いスプレーを吹き掛ける。
動かした体と、緊張した脳が疲れてそのままベッドに沈み込みたい位だったが、これだけはしておかなければいけなかった。
智「あ、そっか…。ガウンじゃ駄目だよな」
寝苦しそうだが、ワイシャツを着込みスーツのズボンを履くとベルトを絞めた。
いつ何時、何があってもすぐに対応出来る様にする為だった。
ルームサービスか…
そんなに腹は減ってないけど…
この高級ホテルはルームサービスを24時間やっているらしい。
メニューも豊富だから寝る前に何か食べておけと言われてたんだった、と思い出した。
智「はい、フルーツとミネラルウォーターを…」
なんだか体が怠い。
社長の部屋を出てからずっとだ。
これは相当疲れたなと、俺はベッドに横になると目を閉じた。
豪華なホテルだな…
ベッドが広いや
ホテルマンが来るまで少しだけ、と目を閉じた俺の瞼はあっという間に重くなった。
寝不足も祟ってるんだろうな
睡魔があるうちに寝てしまうか…
BG用の部屋はいくつか取ってあり、1部屋を何人かで回すよう言われていた。
だから俺の次に仮眠を取る奴が、もうひとつのルームキーを持っている。
そいつが部屋に来たら俺は出て行く、そういう仕組みになっていた。
本当は2~3人ずつ仮眠を取るのだが、早めに休めてラッキーだった。
バレないかとヒヤヒヤしながらシャワーをしなくて済んだのだから。
短時間でも深い眠りに入れそうだった俺は、取り合えず今は何も考えずに眠ろうと思ったんだ。
ルームサービスまだかな…
おれ、寝ちゃうよ…