不透明な男
第10章 視線
ギシ…
ベッドの軋む音がする。
体が少し沈み、目を閉じていても俺の上に気配を感じた。
智「どうして此処に居るんです…?」
俺はパッと目を開けると目の前の人物にそう言った。
「やだ、まだ眠りが浅かったのね」
またお前かよ
紳士も一緒か……
智「貴方の部屋は確か隣の筈では?」
「ああ、どうやら間違えたらしいな」
嘘つけこの野郎。間違えてたら鍵なんて開かないだろ。と猿芝居を心の中で笑った。
智「何をする気です…?」
「んふふ~」
んふふじゃねえこのオカマ野郎が。
何勝手に俺の服脱がそうとしてんだと、オネェの手を掴む。
智「さっきも言いましたけど、駄目ですよ?」
「あら、結構強気なのね?」
「成瀬君は見た目と違って結構手強いんだな。だが、それが煽られるんだよ?」
智「は?何を言って…」
俺の上に乗るオネェの手は掴んで制しているが、狼紳士は野放しだった。
その紳士は俺の両肩を押さえ付ける。
「成瀬君が強いのは知ってるよ。だけど俺達だってそうそう弱くないんだよ?」
「そうよ?腕なんて貴方の倍位あるんだから」
智「く…」
「二人相手じゃ力は敵わないだろう?諦めた方がいい」
新しい世界を見せてあげるよ、なんて歯の浮く様な台詞を吐きやがった。
そうだ、この体勢が駄目なんだ。
こう押さえ付けられちゃ力が出せない。
普通のオッサンなら余裕で弾き飛ばせるが、なんせムキムキ二人。体重だけでも相当重い。
智「これは…、困りましたね」
俺は押し潰されながらふふっと笑う。
「あら可愛い♪」
「手荒な真似はしたくないんだ。大人しくしな…」
俺の頭の上から紳士が覗き込む。
俺は上目遣いで見上げると、困った様に眉を寄せた。
オネェに乗られ、頭上からは紳士が俺を押さえ付ける。
これはどうしたものかと案を探す。
マジで困ったな
ルームサービスおせえ…